大塚化学糖タンパク質工学研究プロジェクト

糖鎖の機能

図:生体内で糖鎖が関与するさまざまな生物現象

糖鎖は、糖が鎖状につながった構造をしており、生体内で機能を有するタンパク質の約半数に修飾され、タンパク質の分泌や機能発現のために不可欠な分子です。

本プロジェクトの共同研究者である大阪大学の梶原康宏教授は、長らく不可能であったタンパク質のアスパラギンに結合する複合型糖鎖を人為的に合成する画期的な技術開発に成功しました。
さらに梶原教授らは、この合成複合型糖鎖をペプチドに修飾する技術を開発し、その技術を応用して糖タンパク質の完全化学合成に道を拓きました。また大塚化学株式会社は、この技術を利用してヒト型二分岐複合型糖鎖の大量合成を可能としました。

わたしたちは、梶原教授、大塚化学株式会社と共同で、これらの技術を応用した革新的な医薬品を創り出すための研究開発を進めています。
これまでの糖タンパク質医薬品から、より安全性が高く、高い付加価値を有する革新的バイオ医薬品につなげていくことを目指しています。

ヒト型糖鎖合成とペプチド糖鎖修飾技術

本プロジェクトの共同研究者である、大阪大学大学院理学研究科の梶原康宏教授らは、世界に先駆けてヒト型糖鎖を酵素化学法により大量調製する技術や、糖鎖をペプチドに修飾した糖ペプチドを合成する技術を開発しました。

大塚化学㈱糖鎖工学研究所では、ヒト型糖鎖をライブラリ化し、これらの技術の医薬品開発(実用化)に向けた展開研究を行っています。

糖鎖ライブラリの基本構造

図:ヒト型糖鎖ライブラリの糖鎖基本構造

糖鎖製造パイロットプラント

図:大塚化学(株)糖鎖工学研究所の
  ヒト型糖鎖合成パイロットプラント

ヒト型糖鎖合成とペプチド糖鎖修飾技術

生理活性ペプチドは、生体内ではホルモンとして作用し、生命機能の発現に重要な役割を担っています。生理活性ペプチドの医薬品への応用研究が進められていますが、溶解度や血中安定性の点から、医薬品への応用が困難なペプチドホルモンが数多く存在すると考えられています。私たちは、ペプチドに対して糖鎖修飾することにより、ペプチドの物性や血中安定性の向上を目指した研究開発を進めています。これまでに糖鎖修飾技術は、既存の分子改変技術と並んで生理活性ペプチドの機能を向上させる新たな技術として有用であることを明らかにしています。

ペプチド糖鎖修飾

図:物性や生物活性の向上を目指したペプチドへの複合型糖鎖修飾
  Yamamoto, N. et al. Tetrahedoron Letters. 45,3287-3290, 2004.

糖タンパク質化学合成技術の開発

エリスロポエチン誘導体の化学合成
図:複合型糖鎖合成品を用いたエリスロポエチン誘導体の化学合成
Kiriko Hirano et al., Angewandte Chemie International Edition 48, 9557–9560, 2009.

糖タンパク質医薬品は細胞培養系で生産されており、細胞の種類や製造ロット間で糖鎖構造の違い(多様性)、未知ウイルスや動物起源のタンパク質などの混入の可能性があり、その品質管理レベルの高さが求められます。

大阪大学の梶原教授らのグループは、ペプチド糖鎖修飾技術とペプチド合成を組合せ、糖タンパク質を完全化学合成する技術を開発しました。本法により合成された糖タンパク質は、単一構造の糖鎖のみが結合し、化学的に均一な構造を有しています。

本プロジェクトでは、化学合成された貧血治療薬エリスロポエチン誘導体の生物機能評価を行い、化学合成品は細胞培養系で生産された市販品と同様な生物活性を示し、化学合成糖タンパク質も培養細胞で生産された糖タンパク質と同様に生物機能が保持されていることを明らかにしました。

今後も、従来型の培養細胞由来糖タンパク質と化学合成糖タンパク質との生物機能の比較を行い、糖タンパク質化学合成技術の確立と医薬品化を目指した応用研究を推進していきます。

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